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G's voice

英会話カフェを経営している男が、それとはほぼ無関係な事を酔った勢いで、無責任に書くコーナー。途中からまじめに小説家を目指すに至る。
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どうなるG-FLEX(8)
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    英会話オンラインソフトウェア開発(1)

     

     

     ここに来て仕事の話で恐縮なのだが、今年から新たな仕事、英会話のオンラインソフトウェアサービスを作る事に着手している。どこかの製品を取り扱おうと言うのではなく、メーカーとして作って販売をするのだ。それも打倒スピードラーニングと密かに心の片隅で思っている力の入れ様である。

     それは現在ようやく旬を迎えたと言って良い音声認識技術を用いたもので、今まであった物とは完全にコンセプトが違う(と本人は思っている)「英語を話す」ためのプログラムとサービスだ。聞き流すだけでペラペラ、みたいな眉つば物ではない。

     

     実は5年ほど前からコンセプトはほぼ出来上がっていたのだが、コスト面で高すぎて無理で、それが最近になってようやく現実味を帯びて来たのだ。そしてまずは一か八か、日本で一番規模の大きな音声認識システムを持つ会社に問い合わせてみた。お問い合わせフォームに長々と内容について書いた。すると驚くことに次の日に「御来社願いたい」と言う返事がすぐに来たのだ。

     慌てた。名刺すらない。まずは僕と社員の名刺を特急便で作った(今まで手作り名刺しか持っていなかった)。あと、スーツがない。もとい。スーツはサラリーマン時代のものを沢山持っているが、着れるスーツがない。僕はすっかり肥ってしまい、ウエストも10センチ以上増えていて全部ズボンが履けない。しかし、この為にわざわざ新調するのもあれだからとケチり、前のホックをしめずにベルトで支える方法で履く事に。チャックは2/3までしか閉まらないため、ちょっと見えるパンツは黒い下着で目立たない様にした。

     

    *

     

     訪問はメールから1週間後くらいだったか、部下のNicola(技術他何でも担当のイタリア人)と一緒にその会社に向かった。

     場所は池袋駅サンシャインシティ。久々の東京。池袋は会社員の時に来た以来で18年以上経っていた。18年前と地形や道は変わらねど、店や風景はすっかり違って見えた。

     しかしまあ、こんなニッチな内容のシステムを扱うっているのに資本金で75億の会社と言うから、大した会社だと言える。将来性への投資が多いのか。その会社のあるビルに行くと、トイレでNicolaといったん軽い打ち合わせをした。そして名刺を確認、、、あれ?まさか、そんな。全身のポケットを2周。なんと名刺がない!僕はこの日の為に作った名刺を忘れてきてしまったのだ。・・・いや、ここで焦ってはいけない。仕方なくNicolaの名刺を3枚もらって、彼の名前をボールペンでバッテンし、その上に僕の名前を手書きで書いた。彼は5枚しか持ってきてなかったから、あちらが3人だと足りなくなると言っているが仕方がない。こっちのが大切だ。

     

     行くとさすがに大きな最新テクノロジーの会社でかっこいいエントランスから、ずーと長い廊下の奥の方の会議室(30人くらい収容)にきれいなお姉さんに案内された。大きな会議室の片隅で二人ぽつりと心細く待っていると、キャリアウーマン風のピシッとした営業の女性と、全部白髪の研究者(おそらく定年の60歳は過ぎている)の様な技術の人が会議室に入ってきた。

     そしてすぐに恐れていた名刺交換。

     僕は、

     

    「いや、普段名刺を持ち歩かないので、忘れてきました。ははは。」

     

     泣き笑いの様な顔になりながらそう言って、ボールペンでNicolaの名前にバッテンして自分の名前を書き加えた名刺を渡した。あ、一応代表です。

     

    「ああ、いえいえ、結構ですよ」

     

     初対面だからそう言うしかないだろう。もらった名刺を見ると、驚くことに白髪の人は技術の最高責任者(チーフ)だった。

     

     円卓の前に大きなホワイトボードがあったので、そこに立って僕は今回の製品のコンセプトに先立ち、私たちのレッスンメソッドの説明を始めた。通常これはスクールで新規の生徒さんに話す内容で、軽く30分掛るのを短縮し、15分で終わる積りだった。一生懸命熱弁する僕の前で、彼らは二人ともノートパソコンに向かって黙々とタイプしていて全くこちらを見ようとしない。(ちゃんと聴いているのだろうか?まさか別の仕事やってるんじゃないだろうな)そんな不安。

     10分ほど経過して、営業の女性を相手に実演を見せたときだった。突如白髪の男性が僕を見て立ち上がって大声で叫んだ。

     

    「僕らはな、君の生徒じゃないんだよ!」

     

     完全に怒っている。それに続けて、

     

    「こっちはな、すごく忙しいんだ!そんな話聞いてる暇ないんだよ!」

     

     と立ち上がりながらドンドン机を叩いている。(うげー、何だこの展開!)そう思いながら僕は、

     

    「ああ、そうですか。ではどうしたらいいんでしょうか?」

     

     冷めた顔で至極冷静な声で聞いた。・・・さすが俺。と言うか、こんな事が今まで何度もあって意外と慣れていたりするので、今ではどんなに偉い人が怒ったとしても、さして驚く事はない(どれだけ怒鳴られて来たかお察しの通りです)。

     

     その対応を見た白髪の人は、

     

    「私たちに何をして欲しいのか、一文で言ってくれたまえ!」

     

     と言った。

     それを聞いて僕は、

     

    「日本語なまりの英語でも認識できる音声認識エンジンを作って欲しいのです」

     

     と答えた。発音の矯正なんて20才過ぎたら大変なので「何とか伝わる英語で、ちゃんと文章が話せる様になる」と言うのが僕の考えるソフトの趣旨だったからだ。それを聞いた彼は、たった20秒で話がすんだじゃないか、と言い「内容を説明する資料はあるかね」と尋ねた。僕は準備した図面などの書類を渡した。名刺は忘れたが、この辺の準備には抜かりがない。

    「うん、、、」頷きながら白髪の彼はホワイトボードの前の僕と入れ代わった。

     

     その後の彼は、とても丁寧に僕らの質問に答えてくれた。そもそも技術的な音声認識システムについては僕らは素人だ。ここでかなりの事を学んだ。そして、彼は最後にあの有名な「○○ラーニング」と仕事をしているので、と言う事を僕の事を見てほのめかせた。それが何を意味しているのかその時は分からなかった。あの時、なぜ途中で説明を遮ったのか。その理由も後になって理解した。

     

     

     ミーティングが終わったあとでネットで調べたら、その技術チーフの話は本当だった。○○ラーニングと仕事をしている、と言うことだ。そのまま「共同開発」みたいな記事が載っていた。相当の関係が出来ている様である。

     通常会社同士の技術的な内容の会議などでは、NDA(Non Discloser Agreement)と言う秘密守秘義務契約を取り交わすし、もちろん僕らもそれを結んでのミーティングだった。しかし、その会社が全く同様の開発をしている2社と同時に仕事をしている時、同時にこれを守るのは非常に難しいだろう。同じ技術者が2社の秘密を聞いて、行ったり来たりしながら双方ともに本当に秘密を守れるか。ついつい言ってしまったり、ひいきする方に密かに情報を流したりしてしまうに違いない。NDAには法的罰則はない。

     

     あの白髪の技術チーフは、実は初めから僕らと仕事が出来ないと思っていたのだろう。だから本題に入る直前に話を遮り、あとは説明に徹した。NDAがまだ固まっていないから、と言い最後に資料の全てを返してくれた。

     ○○ラーニングの方がG-FLEXよりはるかに金も知名度もある。どうやらこの音声認識システムの会社とは仕事を一緒にしない方が良い様なのだった。

     

     

    (了)

     

    (注:この内容には筆者の都合の良い解釈が多々含まれている場合があります事、ご了承下さい。)

     

     

    → どうなるG-FLEX(9)に続く

     

    | どうなるG-FLEX | 23:56 | comments(0) | - | - |