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G's voice

英会話カフェを経営している男が、それとはほぼ無関係な事を酔った勢いで、無責任に書くコーナー。途中からまじめに小説家を目指すに至る。
どうなるG-FLEX(10)
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    オンラインソフトウェア開発(3)

     

     

     実はあと1つの会社とも同様なNDAベースのミーティングを持った。何故なら比べたかったからだ。正直金額がどの程度かかるのか全く分らない。500万円と言われても、1000万円と言われても、高いんだか安いんだか分らない。一応各ITの会社には、500万円ならすぐ出せる、とは言ったのだが、「うーん、500万では難しいでしょう」と言われてしまった。たとえ失敗しても、今の会社がやばくなる事のないように、失敗して無くなっても平気なお金と言うのが正直500万円位だった。銀行などの融資を使えば1000万〜程度はでるだろうが、このプロジェクトの為に、今の会社に借金を負わせる事は避けたかった。

     しかしそうか、そんなに掛るとは。でも客観的に考えてみれば当たり前だ。最終的には年商で3億を考えているプロジェクトに500万円が元手って、あとあと考えれると当たり前かも知れないが、やった事のない事なので、予想もつかなかった。

     どちらの会社も、とても興味を持って聞いてくれて、是非とも協力したいと言う意思表示をしてくれた事は確かである。しかし、その後2社とも全く連絡が無かった。

     

    *

     

     2週間ほど経ってイラついてきた僕は、その仕様の詳細を技術者レベルまでまとめてそれぞれの会社に送ることにした。本来なら、システムを作る会社が作成すべき物だが、一応IT系の学科を卒業しているので、ソフトウェアのフローチャートやシステムの簡単な設計図は書けた。それにPasswordを付けて圧縮ファイルにし、それぞれに送った。

     しかし、その時、ちょっと迷った事があった。この提案の話を同時に他社でもしている事を最初から打ち明けた方が良いかどうか、だ。お互いの信頼関係を築く事を考えたら、最初から1社に頼んで一緒にやるべきだ。他の会社とも話していると言う事は、もしかすると、

    「他社と両天秤に掛けるなんて馬鹿にしている。あて馬にされるかも知れない」

     と思われる可能性もある。また逆に、もし他社と比べなかった場合、こちらはどれだけの事に幾ら掛るのか(常識的なコスト)全く分からないため、吹っ掛けられる可能性もあるのではないかとも思う。

     しばし考えた結果、後になってから「実は他社と同時進行していた」と言うのは、事が進んでから「実は二人の女の子を同時に口説いていた」みたいな感じでフェアではない気がして、最初から「実はこの件は他1社とも話をしております」とメールの最後に付け加える事にした。そうだ、現在は競争が当たり前の時代だ。比べて当たり前だからそれを知らせた方が良いだろうと。

     システムの設計にその一文を加えたメールを送った。

     

    *

     

     それから待てど暮らせど返事がどちらからも来ない。どちらも日本のベンチャー企業ベスト100に入るだけあって激忙しいのだろうが、検討中くらいの返事をよこしてもいいのではないか。いや、もしかすると二股掛けていると言う事が感に触ったのだろうか。いやいや、やはりお金の問題か。両社には、現状すぐ出せる金額は500万円と伝えている。これがもしかすると、チャンチャラおかしい金額なのかも知れない。上司に相談したら、「ガーはははっ」と大笑いの後「やめとけ」と言われたかも。

     僕には正直現実的なこと良くは分からないので、500万くらいで十分開発は可能だと踏んでいた訳だが、実際には一桁違っている可能性もある。ただ、まだ誰もやった事のない内容なので、それは正直まったく未知数な訳だ。

     

    *

     

     さらにミーティングから一か月が過ぎ、全く何の連絡もない。

     もし担当者がちゃんとメールを見ていたとして、考えられる理由は上司に相談した結果もしかして「そう言うのは無視しろ」と言われたのではないか、と言う危惧。理由は、「もっと金を持っている会社と付き合え」みたいな。僕の会社は資本金1000万円、3店舗の英会話スクール。確かに弱小企業である。しかも、本件で予算が500万円と言ってしまった。これがきっとお話しにならないのではないか、と思った。もちろん、多少無理をすれば1500万円位は準備できると思うが、その場合、このプロジェクトに会社の運命を委ねる事になる。つまり、失敗した時の借金がキツイ。(チクショウ、ITベンチャー、ちょっと儲かってるからって他人をなめやがって、と勝手に想像&憤怒)。でもしかし、現実がそうだとしたら、それに則するしかない。

     

    (とにかく会社に負担を掛けずにあと1000万集める方法はないか。)

     

     その時僕の頭に浮かんだ物は「エンジェル」だった。

     エンジェルとは、ベンチャーキャピタリストがリスキーな事業に億単位での投資を行うのに対し、個人のお金を持っている人が、数百万から数千万の投資を有望な新規事業に対して行うものだ。これは正に賭け事、と言っても良い。しかも、ハイリスクハイリターンのみを狙うものが中心と言って良いだろう。正直、一般にこの手の起業家で結果を残せるのは10人に1人と言われ、いわゆる大成功となるパターンは100人に1人もいないだろう。本当に世間的に見て大成功する人間なんて0.01%(1万人に1人)位ではないだろうか。

     そしてここまで漕ぎ着けた場合で、通常共同出資などで別会社を作り、その顧問などをして儲けの何パーセントかを回収する事になる。また、多くの場合、経営者はこのエンジェル(総出資者)の意見に従って会社を運営する必要がある。投資としてはハイリスク、ハイリターン。例えば、今回のプロジェクトの場合、新会社を設立し、その顧問にエンジェル(投資者)が就任し、利益の半分以上を持っていく。

     こう言った投資を受けた場合、起業者の利点は失敗しても返済義務が無い。また悪い点は、大概自分の思った様に運営出来ないし、契約次第では、利益の多くはエンジェルに持っていかれる。と言う感じ。

     ただ、起業家は儲ける以前に自分のアイデアを具現化したい、と言う意欲に燃えているので、実現に向けてとにかく頑張る。エンジェルらは有望なアイデアと人に投資をし、儲けると言う仕組みだ。

     そこで一つの可能性として、まずはエンジェルと言う個人投資家を探すことにした。

     

    *

     

     インターネットで探すとそれ的なサイトはすぐに見つかった。話では聞いたことはあったが、この様に一般的に公募されていると言う事は知らなかった。その見つけた「ナイス・エンジェル」(仮名)と言うサイトには1400人以上の投資家が登録されていた。

     もちろん無料ではない。インターネットの無料サイトほど怪しい物はない。月会費9500円を支払い、起業家会員になった。

     すると自分の企業内容を投稿でき、さらに投資家からサイトを通してメールが来た場合個人的な交渉が進められると言うものだ。

     起業家の投稿の多くは、僕の視点からするとどうやらそんな大そうな物でもなく、老人福祉の絆的仕事や最近流行りのスーパーフードとかの輸入販路拡大、基本的にテレビとかでやってる流行りを追う、しかも年商3000万位の小規模な起業が殆どだった。僕の様に年商3億以上、と堂々と謳っている起業案はほとんどなかった。

     

    (これはちょっとおいしい話、眉つば物に見えるかも知れないな・・・)

     

     と言う不安を余所に、なんと早速次の日にある投資家から連絡が入った。メールでもう少し詳しい内容が知りたい、との事だった。記録上ではその投資家は、僕の提案を3回も見ていた。僕はより詳しい内容を記したが、当然重要なことは会ってからと言う風に返した。

     

     すると次のアクションとして、すぐに返信があった。

    「まずは電話でお話がしたい」

     と言う事で、何時だったらよろしいでしょうか?と聞いて来た。この早いレスポンスにはできるだけ早く答えようと思い、「本日10時過ぎなら家におります」と返事し、携帯番号を教えた。「かしこまりました」と返事。

     

     その日は大和スクールで働いていて、8時半に終わると家路に着いた。しかし、どーしても焼き肉が食べたくなり、30分だけ、と思い安安で一人焼き肉。大和では、平日のこの時間だとお客さんはそんな居なくって、一人で4人席をとってもヒンシュクではない。僕は一人でファミレスとかカフェの店に入ってパソコン仕事をするのが習慣になっているので、焼き肉店でも全く抵抗なし。

     席に座って辺りを見ると僕のほかに二人(たぶん同年代)、おっさん一人焼き肉が居たので少し驚く。俺たちおっさんにとっては、お酒はコミュニケーションの道具ではなく、主役になっている。酒の為の酒時間。酔うと時間なんか何処へやら。

     その後、家に帰る電車の中で、10時ぴったりに携帯が鳴った。「あ・・・」

     まさか時間ぴったりに掛けてくるとは。「いえ、すみません。まだ帰り途中で、あ、電車の中で。番号受けてますので、帰ったらすぐに電話します」と言って切った。いやいや、なかなかちゃんとした人だ。

     

     家に帰るとトイレを済まして、すぐに自分の部屋から電話した。15分の遅刻だ。

     もしもし、どうも。その相手はまだ30代前半で地方出身らしく、すごく訛っていた。

    「最近、藤沢に家買ってねぇ。いや、東京にも家はあるんだけど。やっぱ田舎の出だから、静かな所の方が住みやすいかなって思いまして。」

     ふーん、2件家持ってるんだ。若いのにすごいなぁ、と思いながら、

    「あれ、僕のお店藤沢にありますよ。あの北口のマクドナルドの隣り。分ります?」と言うと、

    「いや、最近越してきたからわからないけど、家は湘南台なんですよ」

     と言う。

    「あら、湘南台って言えば僕の家の駅の2つとなりですよ。」

    「へえ、じゃあ車で15分とか?」

    「そう、その位ですね」

     

     そんな風に意外とすぐ近くに住んでいる事で心理的な距離がぐっと縮まった気がした。

     

    「英会話と音声認識ってあったですが、そう言う技術があるのですか?」

     

     そんな超初歩的な質問に対して、僕は丁寧に答えた。

    「音声認識って言うのは、iPhoneだと、Siriとか、音を認識するシステムです。最近、Googleが音声認識APIを無償公開する事を受けまして、それが私たちがスクールで実践しているP/N reflex TRのソフトウェア化に繋がる大きな機会として現実の状況にも見合っていると思い・・・」

     彼は、ふーんそんなのがあるんですか、とか聞いていたが、突如、

     

    「あの、今回の話は私の仕事ではない気がします。時間が掛りそうなので。だいたい投資家は2,3か月で収益が見込める物に投資するんですよ」

     

     と言う。

     

    「え、そうなのですか?だって僕のイメージだと、投資家が投資して起業家が事業を起こして会社を設立するのが普通じゃないですか?それって半年とか1年掛かりでしょ?」

     

    「いや、建前はそうなんですが、ほとんどの投資家はそんな面倒くさい事には手を付けませんよ」

     

    「え、本当ですか!?」

     

    「いや、僕の周りの投資家の話ですけどね」

     

    「うーん、」僕が納得行かずに考えていると彼は続けた、

     

    「確かに、銀行とかは話を分かってくれないし、堅いですよね。お金はなかなか借りられない物です。・・・もしあれでしたら、僕の知り合い紹介しましょうか?」と言う。

     

    「は?」何の話かわからないままさらに聞きなおすと、

     

    「僕の知り合いで、その内容だったら1千万位貸してくれる業者を紹介しますよ」

     

     と言う事だった。・・・ああ、なんだそう言う事か。

     即座に相手が何をしようとしているのか分かった僕は、

     

    「いや、1千万位だったら自分で銀行や公庫で借りられますから、必要ないです。今の自分の会社のリスクにならない様にする為に投資家を探しているんですけど」

     

     それを聞いて、彼は慌てた様子で、

     

    「ああ、そう言う事だったら、いい奴がいますよ。かなりやり手です。元銀行員でね。」

     

     そこまで聞いて僕は、

     

    「別に要りません」

     

     と言って電話を切った。

     

     

    (了)

     

     

     

    どうなるG-FLEX(11)に続く

     

     

    | どうなるG-FLEX | 21:27 | comments(0) | - | - |